【小学生・中学生・高校生向け】物語文・小説文の読み方・解き方 その1

 こんにちは、またはこんばんは、まさかな(公募ストック運営・管理)です。またまた間が空いてしまいました。ごめんなさい。

 さっそくですが「物語文・小説文の読み方・解き方」に参りましょう。今回は実在する作家の物語文を用(もち)いて、それを基(もと)に、物語文・小説文を読むときのコツについてお話ししていきたいと思います。

【小・中・高校生向け/作文・国語シリーズ・目次と予定】
作文の書き方・コツ(その1)苦手イシキ払拭編(3月20日)
作文の書き方・コツ(その2)苦手イシキ克服編(3月26日)
説明文・論説文の読み方・解き方 その1(3月26日)
説明文・論説文の読み方・解き方 その2(例文あり)(4月5日)
・物語文・小説文の読み方・解き方 その1(5月3日)
・物語文・小説文の読み方・解き方 その2
・物語文・小説文の読み方・解き方 その3
・選択式なら満点が取れる! 実際のテストの「解き方」
・保護者の方にも読んでほしい「成長」に関わる国語の大切さ
・文章力をさらに磨きたい人のためのオススメ書籍 その1
・文章力をさらに磨きたい人のためのオススメ書籍 その2

※本コラムの転載行為や、本コラムを元にしたYouTube等での配信行為は、これを全て固く禁じます。


■物語文・小説文を読み解くコツ

 経験上、前回までの説明文・論説文に比べると、今回の物語文・小説文のほうがわかりやすい、好きだという生徒さんのほうが多い気がしています。

 登場人物の心情(しんじょう=気持ち)などに入り込みやすいからでしょうか(ただ、あんまり入り込むとまたむずかしい、というのもあるのですが)。

 物語文・小説文を読む際のコツは、大きく分けて3つ。その3つを、全3回にわけて、一つずつお話していきます。

 今回お伝えするコツで、読み進む際に注目すべきポイントがはっきりしてゆけば、もっと小説文・物語文を好きになれるのではないかな、と思います。

■【コツの1】登場人物と、セリフや行動が誰(だれ)のものなのかを把握(はあく)する

「ではみなさんは、このぼんやりと白いものがほんとうは何か、ご存知(ぞんじ)ですか?」

 先生は、黒板につるされた大きな星座図の、上から下へ白く、煙(けむり)のように流れているところを指しながら、みんなに問いをかけました。

 カンパネルラが手をあげました。それから四、五人が手をあげました。ジョバンニも手をあげようとしましたが、急いでやめました。

「あれはみんな星だ」と、いつか雑誌(ざっし)で読んだのですが、最近(さいきん)、ジョバンニはまるで毎日教室でもねむく、本を読むひまも読む本もないので、どんなこともなんだかよくわからないという気持ちがするのでした。

 ところが先生は早くもそれを見つけたのでした。

「ジョバンニさん。あなたはわかっているのでしょう」

 ジョバンニは勢(いきお)いよく立ちあがりましたが、立ってみるともうはっきりとそれを答えることができないのでした。

 ザネリが前の席(せき)からふりかえって、ジョバンニを見てくすっとわらいました。

 ジョバンニはもうどぎまぎしてまっ赤になってしまいました。先生がまた言いました。

「大きな望遠鏡(ぼうえんきょう)で銀河(ぎんが)をよく調べると、銀河はだいたい何でしょうか?」

 やっぱり星だとジョバンニは思いましたが、こんどもすぐに答えることができませんでした。

 先生はしばらく困(こま)ったようすでしたが、眼(め)をカンパネルラの方へ向(む)けて、

「ではカンパネルラさん」と指名しました。

 するとあんなに元気に手をあげたカンパネルラが、やはりもじもじ立ち上がったまま、やはり答えることができませんでした。

 先生は意外(いがい)なように、しばらくじっとカンパネルラを見ていましたが、

「では、よし」と言いながら、自分で星座図を指しました。

「このぼんやりと白い銀河を大きな望遠鏡(ぼうえんきょう)で見ると、もうたくさんの小さな星に見えるのです。ジョバンニさん、そうでしょう?」

 ジョバンニはまっ赤になってうなずきました。けれどもいつかジョバンニの眼は涙(なみだ)でいっぱいになりました。

 そうだ、僕(ぼく)は知っていたのだ、もちろんカンパネルラも知っている。

 いつかカンパネルラのお父さんのうちでカンパネルラといっしょに読んだ、雑誌(ざっし)のなかにあったのだ。

 それだけではない、カンパネルラはその雑誌を読むと、すぐお父さんの書斎(しょさい)から大きな本をもってきて、「ぎんが」というところをひろげ、まっ黒な頁(ページ)いっぱいに広がる、白い点々のある美(うつく)しい写真を二人でいつまでも見たのでした。

『銀河鉄道の夜』(宮沢賢治)より(読みやすいようにまさかなのほうでところどころ言葉づかいなどを変えています)

 今回題材に選んだのは、宮沢賢治(みやざわけんじ)の『銀河鉄道の夜』です。文章は「青空文庫(あおぞらぶんこ)」からいただいてきました。

 ちなみに上の文章は、『銀河鉄道の夜』の、一番最初の出だしの部分です。説明なしでいきなりセリフ(登場人物の話し言葉のこと)から物語がはじまる、というのもなんだか急な感じがしますが、こういう始まり方もあります。

 さて、コツの1つ目は、「登場人物と『そのセリフ、その行動が誰(だれ)のものか』をちゃんと把握(はあく)する」ということです。

 さて、みなさんは、いまの文章の中で、「登場人物には誰がいるか」「このセリフは誰が話しているものか(=誰のことばか)」「この行動はだれのものか」を、ちゃんと把握(はあく)しながら読み進めることができたでしょうか?

文章に直接(ちょくせつ)書き込んだり、色分けしてみる

・赤い下線は、登場人物を示している言葉を印づけたもの、
・青い下線は、セリフを印づけたもの、
・オレンジの下線は、(どうやらこの物語の主人公らしい)ジョバンニの行動・動作を印づけたもの、
・緑の下線は、カンパネルラの行動・動作を印づけたもの、

といったところでしょうか(ちょっと汚いですね。色はあとでつけ直しておきます)。

 こうしてみると、たとえば今わかる限りの登場人物には、

・先生
・ジョバンニ
・カンパネルラ
・ザネリ
・カンパネルラのあとに手を上げた4、5人

がいる、というのがわかるかと思います。

みんな、「読みながら」わかってゆく

 で、ここでまず、とくに国語を苦手にしている人がいたら大事に思っておいてほしいのは、「こうした事柄(ことがら)を把握(はあく)してゆくのは、『みんな読みながらやっていること』であって、読む前から把握できている人はいないんだよ」、ということです。

 登場人物は何人いるのか、主人公は誰か、この動作、あのセリフは誰のものなのか。

 そういったことは、読んでいくうちにだんだんと分かっていくものなのです。

 その「わかっていくスピードの差」みたいなものはあるでしょうが、それも、文章を読む経験(けいけん)を積(つ)んでいくことで、必ず縮(ちぢ)まっていくものです(ここらへんについては次回の「実際のテストの「解き方」でくわしくお話ししていくつもりです)。

 だから、一回読んで「はーわかんねえ」と投げ出したくなるときもあると思います(じっさい、そういうめんどくさい文章もあります。こんかいの『銀河鉄道の夜』も、原文のままでてくると読むのは相当めんどくさいです)が、それは、最初(さいしょ)はみんなおなじ。

「だんだんと分かってゆく」のだと、知っておいてくれたら嬉(うれ)しいです。

(たぶん新しいところに入る時には、先生が「一度読んでおいてください」というお話をすると思います。そこには「こういう話なんだ」とおおまかにでも慣れておいてくださいね、という意味合いもあるのだと思います)

 慣(な)れないうちは、上の画像のように、色分けしてマークしてゆくのもいいと思います(それをやめさせたり怒ったりする先生は、おそらくですがいないのではないでしょうか)。

日本語の文章の、大きな特徴(とくちょう)

 別の部分に目をむけてみましょう。

 青の下線を引いた、いわゆる「セリフ」ですが、これがすべて先生のものである、というのは気がついたでしょうか。

 じつは、今回抜き出した文章のなかで言葉を発(はっ)しているのは、先生だけなのです(ジョバンニの「思っている」部分はありますが、これは「気持ち」であって会話・セリフではないので、ここではカウントしません)。

 日本語の文章の大きな特徴(とくちょう)のひとつとして、「そのセリフや動作が誰のものか、はっきりと書かれていないときがある」というものがあります。

 物語文のなかには、複数(ふくすう)の登場人物のセリフだけが延々(えんえん)と続く場面もあります。こういう場合、さきほどの「登場人物は誰がいるのか」と「このセリフは誰のものなのか」、両方の理解がしっかり噛(か)み合っていないと、物語の内容を正しく把握(はあく)するのは難(むずか)しくなるわけです。

*   *   *

 コツのその1はここまで。最初は3つあるコツを一つのコラムにまとめるつもりだったのですが、長くなる上に理解はあまり深くならないだろうなと判断して3回にわけることにしました。

 すこし長めのシリーズになりますが、ついてきていただけると嬉しく思います。

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